
こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、デニソン・ウィットマー「Anything At All」!やさしい歌声と美しいメロディと情景豊かな歌詞と…です。
「夢中図書館 音楽館」は、ロックの名盤や新譜、個人的な愛聴盤などをレビューする音楽ブログです。あなたのお気に入りの音楽を見つけてください。
■デニソン・ウィットマー
今日取り上げるのは、米ペンシルバニア州出身のシンガーソングライター、デニソン・ウィットマー(Denison Witmer)です。
デニソン・ウィットマーは、米インディー・シーンで長く活動するシンガーソングライターです。
その音楽スタイルは「ネオフォーク」と評されます。よくキャット・スティーヴンスやニック・ドレイクといった1970年代のシンガーソングライターと比較されたりします。
1995年に「My Luck, My Love」というタイトルのカセットテープをリリースしたのが音楽活動のはじまり。これは、ウィットマーが高校3年生の時に英語の授業の課題として録音したものでした。
その後1998年に最初のアルバム「Safe Away」を自主リリースします。彼は制作した1000枚を売るためにライブを始めると、間もなく完売。このアルバムは後にレコード会社から再発されることになりました。
そんな手づくりの音楽活動を続けてきたウィットマーですが、やがてインディー・シーンで名を知られる存在となります。
2005年にリリースした5枚目のアルバム「Are You a Dreamer?」はメディアからも高評価を得て、そのネオフォークと呼ばれるサウンドスタイルが支持を広げていきます。
2012年には盟友スフィアン・スティーブンスが手掛けるレーベル"Asthmatic Kitty Records"と契約し、アルバム「The Ones Who Wait」をリリース。
その後、自身の名前を冠したアルバム「デニソン・ウィットマー」(2013年)や「American Foursquare」(2020年)などを同レーベルからリリースしています。

■Anything At All
そして2025年、待望の新譜「Anything At All」が届けられました。本作は、盟友スフィアン・スティーヴンスのプロデュース。
これがもう、やさしく美しいネオフォークソングが満載…。ウィットマーの魅力を存分に楽しめる名盤となっています。
今日は、そんなデニソン・ウィットマーの最新作「Anything At All」から、個人的なおススメを紹介しましょう。
まずは1曲目、「Focus Ring」。
ウィットマーのやさしい歌声から幕を開けるネオフォーク・ナンバー。スフィアン・スティーヴンスとの共作です。
歌声もメロディもギターの音色も、澄み渡るようにやさしい…。サビの「Anything at all」のところでは、女性コーラスが重なります。
これがまるで教会音楽のように、崇高に深遠に聴こえるから不思議です。聴くほどにハマっていく名曲です。
続いて2曲目、「Older and Free」。
これまた、やさしく美しいフォークナンバー。聴くほどに沼っていく感覚は、その歌声やメロディはもちろん、歌詞にもあります。
「Down by the lake it’s all Queen Anne’s Lace/ Up in the hills it’s Wineberry / I stopped at a farmstand along my way / Picked up a pint of wild cherries」
(クイーンアンズレースの花咲く湖畔を下り、ワインベリーの茂る丘の上。途中の農産物直売所に立ち寄って、野生のチェリーを1パイント買った。)※ふゆき訳
風景が思い浮かぶようですよね…彩り豊かな。美しい歌詞にも心地よい気持ちになる静かな名曲です。
そして3曲目、「A House With」。
これまた、歌詞の魔法にかかるようなフォーク・ナンバー。聴いたこともない単語が次々と歌われます。何かと思ったら、鳥や植物の名前でした。
「Cardinals,Sparrows,Goldfinch,Juncos,Flickers,Waxwings,Titmouse,Buntings」
(ショウジョウコウカンチョウ、スズメ、ゴシキヒワ、ユキヒメドリ、キツツキ、レンジャク、シジュウカラ、ホオジロ)※ふゆき訳
こんな鳥が庭にたくさん来る家に住みたいと、他愛もないと言えば他愛もない歌詞を歌ってるんですよね。植物も同じです。
ただ、歌詞の最後に「生命と意味に満ちた家を持ちたかった。でもすべては野生で儚い。来ては去ってを繰り返す」と歌われます。なんか、淡々としていながら深いですよね…。
いかがでしょうか、デニソン・ウィットマー。日本ではほとんど知られていないですが、意外に日本人好みなミュージシャンだと思います。
特に、目の前の風景や出来事を情景が浮かぶように歌詞にするスタイルは、俳句や日本画などの日本の文化にも相通じるようにも思います。
いつか、彼の音楽を目の前で聴いて、そして感じてみたい。そんな風に思うデニソン・ウィットマーの新譜「Anything At All」でした。
ありがとう、デニソン・ウィットマー! ありがとう、アルバム「Anything At All」!