
こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、10/9はジョン・レノンの誕生日。自らの心のうちをさらけ出したアルバム「ジョンの魂」です。
「夢中図書館 音楽館」は、ロックの名盤や新譜、個人的な愛聴盤などをレビューする音楽ブログです。あなたのお気に入りの音楽を見つけてください。
■今日は何の日
1日1頁、その日に起きた出来事やミュージシャンの誕生日などが記載されているタワレコ手帳(現在は製造中止…)。
10月9日の頁には、こんな出来事が記されていました。
【誕生日】ジョン・レノン(1940)
生きていれば、今日(2025年10月9日)で85歳だったんですね…。誕生日おめでとう、ジョン・レノン(John Lennon)。
ジョン・レノンは、言わずと知れた、ビートルズのメンバー。偉大なソングライター&シンガーです。
ビートルズで数々の伝説をつくりますが、メンバー間の不和などから1969年9月、ジョンはバンドからの脱退を宣言。バンドは1970年4月に事実上解散しました。
もしかしたら、その成功と名声の裏で、「ビートルズのジョン・レノン」という巨大な偶像に苦しんでいたのかもしれませんね…。
バンド解散後、ジョンは、原初療法(Primal Therapy)という精神療法を受けています、それは、精神的苦痛の根源を過去へと探っていき、叫ぶことによってその傷を癒すという治療法でした。
そんなジョンの葛藤と精神の解放が色濃く出たアルバムが、1970年12月リリースの「ジョンの魂」(John Lennon/Plastic Ono Band)です。
ジョンの実質的な初のソロ・スタジオ・アルバム。レコーディングには、盟友のリンゴ・スター(ドラム)や旧友のクラウス・フォアマン(ベース)らが参加しています。
このアルバムの特徴は、邦題の通り、「ジョンの魂」の解放にあると言ってよいでしょう。
原初療法の影響を色濃く受けたと思われる、過去のトラウマを解き放つような叫びがアルバムの随所で放たれます。
幼い頃の記憶や政治・宗教、さらにはビートルズといった、これまでジョンを縛っていた様々なものからの「解放」…。
ソロとなってようやく「一人の人間」として、自らの心の内をすべてさらけ出したアルバム。そんな赤裸々な楽曲集が「ジョンの魂」です。
■個人的なおススメ
それでは、そんなジョン・レノンのアルバム「ジョンの魂」から、個人的なおススメです。
まずは1曲目、「マザー」(Mother)。
アルバムの冒頭を飾る衝撃のナンバー。シンプルなピアノとドラムに乗せて歌われるのは、幼い頃に母と別れ叔母のもとで育てられたジョンの「母」への渇望です。
Mother, you had me but I never had you
I wanted you, you didn't want me
So I, I just got to tell you
Goodbye, goodbye
(母さん 僕はあなたのものだったけど、あなたは僕のものにはならなかった。
僕はあなたを求めたけど、あなたは僕を欲しがらなかった。
だから 僕はあなたに言わなくちゃならない。グッドバイ…さよなら。)
終盤には、「ママ、行かないで」「パパ、帰って来て」というフレーズが何度も繰り返され、喉が張り裂けんばかりのシャウトが響き渡ります。
ここまで心の内面を赤裸々に歌った楽曲があったでしょうか…。ジョンの魂をぶつけられるような、感情あふれるナンバーです。
続いて10曲目、「ゴッド」(God)。
こちらもまた、ジョンの魂が解き放たれた衝撃のナンバーです。ジョンの決別宣言…これまで信じてきたあらゆる「偶像」を一つ一つ否定していきます。
聖書、イエス・キリスト、ケネディ、インドの指導者、エルヴィス、ディラン…。そしてビートルズすらも、もう信じない。夢は終わったんだ…。
そして彼が信じるのは、自分自身とヨーコだけだと歌います。この曲を聴くと、ジョンがいかに巨大な幻想からの解放を求めていたのかを知ることができます。強烈なナンバーです。
そして7曲目、「ラヴ」(Love)。
アルバム全体が、ジョンのトラウマや社会への怒りを歌い上げる中で、この曲は一服の清涼剤であり、また彼が最終的に見出した真理を説いているようです。
"Love is real, real is love / Love is feeling, feeling love…"。そのようなシンプルなフレーズが、ジョンの美しいピアノをバックに、静かに切なく歌われます。
他の曲で見られる感情むき出しのシャウトとは対照的な、祈りのように静謐でやさしさに満ちた楽曲。ジョンが生涯とおして歌い続けた「普遍の愛」が伝わる名曲です。
いやぁ、すばらしいアルバムです。ジョン・レノンの実質的な初のソロアルバム「ジョンの魂」。
ビートルズ時代の美しいメロディや華やかなアレンジを期待して聴くと戸惑うかもしれませんが、これはジョンが自分自身のトラウマと向き合い、その痛みを解き放ったきわめて稀有な作品です。
あらためて、ジョンの魂が救われていることを願いたい。今日(10月9日)は、ジョン・レノンの誕生日。おめでとう、ジョン。
今日の夢中は、10/9はジョン・レノンの誕生日。自らの心のうちをさらけ出したアルバム「ジョンの魂」でした。
ありがとう、ジョン・レノン! ありがとう、アルバム「ジョンの魂」!