こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、バッドフィンガーのギタリスト、ジョーイ・モーランドによるバッドフィンガー名義のアルバム「No Matter What – Revisiting The Hits」です。
■バッドフィンガー
2021年、早くも最大の驚きとなるアルバムが登場しました。
それが英ロックバンド、バッドフィンガーによる新作アルバム「No Matter What – Revisiting The Hits」です。
No Matter What – Revisiting The Hits
これ、バッドフィンガーのファンにはびっくり…。
だって、バッドフィンガーは70年代前半に活躍したバンドで、悲劇に次ぐ悲劇に見舞われて…。
もうバンドとして活動なんてできないはず。それが新作アルバムってどういうこと?
そんな疑問に踏み込む前に、まずはバッドフィンガーについて説明しましょう。
英ロックバンド、バッドフィンガー。
前身のパンサーズ、アイヴィーズを経て、1969年「バッドフィンガー」に改名しました。
メンバーは、ピート・ハム、トム・エヴァンス、ジョーイ・モーランドら。
1970年に、1stアルバム「マジック・クリスチャン・ミュージック」をリリース。
ビートルズが設立したアップルレコードから発売されたこともあって、ビートルズの弟分として注目されます。
バンドは、同年に「ノー・ダイス」、翌年に「ストレート・アップ」と順調にアルバムをリリースします。
しかしこの頃、アップルレコードはビートルズが解散したことにより財政難に…。これが、バンドの悲劇のはじまりでした。
■悲劇のバンド
バンドのマネージャー、スタン・ポリーは新たなレーベルを探します。
しかしこれがアップルレコードと関係をこじれさせ、4thアルバム「アス」は発売が延期されることに…。
バンドはその後、ワーナー・ブラザーズと契約し、「涙の旅路(Badfinger)」、「素敵な君(Wish You Were Here)」(いずれも1974年)と相次ぎアルバムをリリースしますが、バンド内部の軋轢は高まっていきました。
特に、バンドを悩ませたのは、マネージャーのスタン・ポリーによる横領という金銭トラブルでした。
涙の旅路 Badfinger(Expanded Edition)
こいつがとんでもない食わせ者で、極秘にひどい契約を結ばされていたバッドフィンガーは利益をむしり取られました。
やがてスタン・ポリーが管理していた10万ドルが消滅しているということが発覚すると、バンドのアルバムは発売停止に…。
さらにこの問題が訴訟に発展すると、バンドに対する給与支払いが止まります。
最後までスタン・ポリーを信じていたバンドのリーダー、ピート・ハムはこれを苦にして首つり自殺をしてしまいます。
これによりバンドは終焉を迎えました…。
なお、バンドはその後、残されたメンバーで再結成されますが、不和により分裂。
一時、2つのバッドフィンガーが活動することになりますが、一方を率いていた創設メンバーのトム・エヴァンスが自殺。
こうして、バッドフィンガーの歴史は終わった…かのように見えました。
■ジョーイ・モーランドのバッドフィンガー
もう一つのバッドフィンガーは、元ギタリストのジョーイ・モーランドがその名を名乗って活動していました。
今回、新作をリリースしたのは、このジョーイ・モーランドが率いるバッドフィンガーです。
このアルバムでは、バッドフィンガーの往年の名曲を豪華アーティストと共演。
その面子は、トッド・ラングレンやリック・ウェイクマン(イエス)、イアン・アンダーソン(ジェスロ・タル)、マシュー・スウィート、リック・スプリングフィールドら、懐かしい名前も入り混じるそうそうたる顔ぶれ。
だからこのアルバムは、新作というよりは、コンピレーション・アルバムと言ったほうがいいかもしれません。
それでもこうして、バッドフィンガーの名曲が今によみがえったのはうれしい…。
悲劇に見舞われたバンドですが、短期間のバンド活動の中で数多くの名曲を送り出しました。
今回のアルバムを聴いても、その優れたソングライティングの才能にうならされます。すでにヘビロテ再生中。名曲は永遠です…。
■個人的なおススメ
それでは、ジョーイ・モーランドによるバッドフィンガー名義のアルバム「No Matter What – Revisiting The Hits」、その中から個人的なおススメをとり上げましょう。
まずは、1曲め「No Matter What」。
2ndアルバム収録のポップ名曲。全米チャート8位のスマッシュヒットとなりました。
イントロのギターもオルガンの音色も気持ちいい。70年代のテイストたっぷりです。
共演するのは、往年の人気バンド、ヴァニラ・ファッジのマーク・スタイン。相性良すぎです。
続いて、2曲め「Come &Get It」。
1stアルバム収録の、ポール・マッカートニーが書き下ろした名曲です。
共演するのは、イエスのリック・ウェイクマン。ピアノが印象的に鳴り響きます。
あらためてメロディの秀逸さに息を飲みます。さすがはポール、さすがはバッドフィンガー…。
そして4曲め「Day After Day」。
3rdアルバムに収録されているロック・バラード。
共演するのは、ジェスロ・タルのイアン・アンダーソン、テリー・リード、マンチェスター・ストリング・クァルテット。
もともとの甘いメロディに、甘いギターの音色とやさしい管弦楽器の音色が加わって、楽曲の魅力が増しました。
いやぁ、バッドフィンガー、最高です。
いま聴いても色褪せないポップなメロディ…。悲劇がバンドを見舞ったのは残念ですが、曲は時代を超えて受け継がれます。
いろいろ紆余曲折がありながら、このアルバムがいま世に送り出されたのは奇跡です。再びバッドフィンガーのオリジナルアルバムを聴きたくなる、そんな1枚でした。
ありがとう、バッドフィンガー! ありがとう、「No Matter What – Revisiting The Hits」!