こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、ジャクソン・ブラウンの7年ぶり、通算15枚目となるアルバム「ダウンヒル・フロム・エブリホェア」です。
■ジャクソン・ブラウン
ジャクソン・ブラウン。
独ハイデルベルク生まれ、米ロスアンゼルス育ちのミュージシャン。
ローリングストーン誌が選ぶ「史上最も偉大なソングライター」に名を連ねる、多くの支持を集めるシンガー・ソングライターです。
彼は10代後半から、そのソングライターとしての才能を開花させます。
ニコ(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド)がアルバム「Chealsea Girl」(1967年)にブラウン作の名曲「These Days」を収録、業界のなかで注目を集めます。
以来、イーグルスやリンダ・ロンシュタットらが彼の曲を取り上げるようになりました。
イーグルスのデビュー曲「テイク・イット・イージー」は、ジャクソン・ブラウンとグレン・フライ(イーグルス)の共作です。
そんな彼が自身のデビュー・アルバムをリリースしたのは1972年、自身の名を冠した「ジャクソン・ブラウン」でした。
高い評価を受けたこのアルバムで、彼の名は一躍世に知られることになります。シングル「ドクター・マイ・アイズ」もトップ10ヒットとなりました。
その後、「レイト・フォー・ザ・スカイ」(1974年)、「プリテンダー」(1976年)、「孤独なランナー」(1977年)など、傑作を次々とリリース。
同時代のジェイムス・テイラーらと共に、ロック・シーンにシンガー・ソングライターという新しいスタイルを確立しました。
■ダウンヒル・フロム・エブリホェア
そんな偉大なシンガー・ソングライター、ジャクソン・ブラウンが新作をリリースしました。
前作「スダンディング・イン・ザ・ブリーチ」から7年ぶり通算15枚目となるフル・アルバム。
それが今日紹介するこちら。「ダウンヒル・フロム・エブリホェア」です。
これがもう…。彼らしい社会的なメッセージに満ちた作品になっているのです。
もともと活動家としても知られるジャクソン・ブラウン。
人種問題や脱原発、環境保護などに熱心に取り組み、その思いを歌にして世に問うてきました。
本作でも社会派シンガー・ソングライターの足場は全くブレず、むしろさらに思いが強くなっている感じ。
そもそも、タイトルからして「何もかもが下り坂」(ダウンヒル・フロム・エブリホェア)。いま社会は、人種の分断や環境破壊など様々な危機に瀕していると訴えます。
それでも「尊厳と正義が僕たちが生きていく上で重要なすべてのことの根幹なんだ」と、社会派らしく前を向きます。
「正義が現実のものとなるまで」(Until Justice Is Real)や「今も何かを追い求めているんだ」(Still Looking For Something)なんて曲も…。
すごいな、ジャクソン・ブラウン…。70歳を超えても、変わらぬ「社会を変えたい」という思い。
波乱と激動の今の時代だからこそ、突き刺さるメッセージがそこにあります。2021年に問いかけるメッセージ、「ダウンヒル・フロム・エブリホェア」です。
■個人的なおススメ
それでは、そんな「ダウンヒル・フロム・エブリホェア」から個人的なおススメです。
まずは2曲め「My Cleveland Heart」。
なかなか変革に踏み出せない人に対するメッセージ。弱い心を人工的な壊れない心臓に置き換えたら…という歌詞で、一歩踏み出すことを促します。
MVには、若手のシンガー・ソングライターとして注目されるフィービー・ブリジャーズが出演。彼女はジャクソンの音楽を子供の頃から聞いていたのだとか。歌も思いも次代につながっていきますね…。
続いて4曲め「A Human Touch」。
レスリー・メンデルソンとの共作及びデュエット曲です。
優しげなナンバーですが、そこで表現されるのは未だに存在する同性間のリレーションシップに対する差別だったりします。
「A Human Touch」(人とのつながり)の大切さをしっとりと訴えかけるナンバーです。
そして7曲め「The Dreamer」。
これまでの暮らしが引き裂かれようとしているメキシコ移民の女性の物語。メキシコ移民の強制送還の問題をとり上げた曲です。
ブラウンは歌います。本当に怖いのは、国境を隔てる壁ではなく、人々の心にある差別の壁なのだと…。
メキシコ系米国人グループ、ロス・センゾントレズとの二か国語によるコラボレーションです。
ほんと、すごいな、ジャクソン・ブラウン。どの曲も胸にズシンと響きます。
そうだよね、社会を変えないといけない。もっと明るい未来をつくらなくちゃ…。
「ダウンヒル・フロム・エブリホェア」を聞いて、「アップヒル・フロム・ヒア」(ここから上り坂)にしていきましょう!
ありがとう、ジャクソン・ブラウン! ありがとう、「ダウンヒル・フロム・エブリホェア」!