こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、泥だらけの土手から…ニルヴァーナ伝説のライブ盤「フロム・ザ・マディ・バンクス・オブ・ザ・ウィッシュカー」です。
「夢中図書館 音楽館」は、ロックの名盤や新譜、個人的な愛聴盤などをレビューする音楽ブログです。あなたのお気に入りの音楽を見つけてください。
■今日は何の日
1日1頁、その日に起きた出来事やミュージシャンの誕生日などが記載されているタワレコ手帳(現在は製造中止…)。
9月25日の頁には、こんな出来事が記されていました。
デイヴ・グロール、ニルヴァーナにドラマーとして加入(1990)
1990年代にロックシーンを席巻したグランジロック・ムーブメント。その中心的なバンドがニルヴァーナ(Nirvana)でした。
ニルヴァーナと言えば、カート・コバーン(ボーカル&ギター)とクリス・ノヴォセリック(ベース)、そしてデイヴ・グロール(ドラム)の3人組というのが一般的な認識ですが、実はデイヴは後から加入したメンバーです。
デイヴがバンドに加入したのは、ニルヴァーナ結成から約3年後の1990年9月25日と伝わります。
前に所属していたバンドが解散して今後の活動に困っていたグロールが、新しいドラマーを探していたニルヴァーナのオーディションを受けたのがきっかけ。
デイヴのドラミングを見たカートは絶賛、即座に加入が決まったと言われています。
デイヴが加入して最初にレコーディングされた2ndアルバム「ネヴァーマインド」は、ロック史に残る大ヒットを記録しニルヴァーナを一躍スターダムに押し上げました。
そのヒットの陰には、カートのソングライティングもさることながら、デイヴの優れたドラミングとコーラスワークも貢献していると評価する専門家やファンも少なくありません。
デイヴの加入は、アルバム制作だけでなくライブ公演でもバンドのスケールアップに大きく貢献しました。
この時期、ニルヴァーナのライブは即ソールドアウト、3人組とは思えない重厚なサウンドを奏で出し、オーディエンスを熱狂の渦に巻き込んだのです。
■フロム・ザ・マディ・バンクス・オブ・ザ・ウィッシュカー
今回は、そんなニルヴァーナの熱狂のライブ音源を収録したアルバム「フロム・ザ・マディ・バンクス・オブ・ザ・ウィッシュカー」(From the Muddy Banks of the Wishkah)をとり上げたいと思います。
アルバムタイトルは、バンドの起源であるワシントン州アバディーンを流れる「ウィッシュカー川」に由来しています。
直訳すると「ウィッシュカー川の泥だらけの土手から」。ボーカルのカートがかつて、このウィッシュカー川に架かる橋の下で寝泊まりしていたという話にちなんでいます。
このアルバムは、そのカートが自ら命を絶った後に、残されたクリスらによって編纂、1996年にリリースされたもの。
思いたっぷりのタイトルがつけられたのも分かりますね…。ただ、アルバムに収録されたライブ音源の数々は、感傷に浸る隙を少しも与えません。
チューニングが狂ったまま演奏が続いたり、カートのギターがハウリングを起こしたり…。まるで彼らが目の前で演奏しているかのような臨場感…。
スタジオ盤とは異なる生々しく荒々しいサウンドが、このアルバムの魅力です。まさに「泥だらけの土手」を彷彿させるライブステージが、この1枚に再現されています。
■個人的なおススメ
それでは、そんなニルヴァーナの1996年にリリースされたライブアルバム「フロム・ザ・マディ・バンクス・オブ・ザ・ウィッシュカー」から、個人的なおススメです。
まずは2曲目、「School」。1991年11月25日、蘭アムステルダム公演から。
このアルバムを象徴するような生々しく荒々しいナンバー。ライブならではの衝動や緊迫感に満ち溢れています。
元々は1stアルバム「ブリーチ」収録の初期代表曲。シンプルなリフが特徴ですが、ライブ盤ではこのリフが怒涛の如く押し寄せノイジーに響きます。
加えてカートのボーカルは、感情むき出しの激しい怒りとなって解き放たれます。「No Recess!」(休憩なんてなしだ!)の絶叫は、カートの魂の叫びでしょう。
続いて4曲目、「Aneurysm」。1991年12月28日、米デルマー公演から。
こちらも全盛期のバンドの勢いそのままを体感できる生々しいライブ音源。イントロからして、3人のサウンドがぶつかり合うような緊張感を感じます。
元々はシングル「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」のB面としてリリースされた楽曲。大ヒット曲の影に埋もれていたと言っても差し支えない曲でした。
それがライブ盤では見違えるほどの魅力を放ちます。徐々に熱を帯びていくカートのボーカルもバンドの演奏もライブならではの迫力。圧巻のロックナンバーです。
そして11曲目、「Heart-Shaped Box」。1993年12月30日、米ロサンゼルス公演から。
この曲は、最後のスタジオアルバムとなった「イン・ユーテロ」から先行シングルとしてリリースされたナンバー。ニルヴァーナ後期の代表曲です。
ライブ盤に収録されたテイクでは、カートのギターのフィードバックやクリスの重厚なベース、デイヴの力強いドラムが絡み合い、スタジオ盤とは異なる荒々しい演奏を聴くことができます。
特にサビのカートの絶叫のような歌声は鳥肌が立ちます。この演奏から約3か月後にカートは27歳で命を絶つことになります。痛々しさすら感じる歌声に心震わさずにはいられません。
いやぁ、ものすごい迫力でした…。ニルヴァーナのライブアルバム「フロム・ザ・マディ・バンクス・オブ・ザ・ウィッシュカー」。
泥だらけの土手から、若きカートはどんな気持ちで夜空を眺めたのでしょうか…。アルバムを聴きおえたとき、言葉では言い表せない複雑な感情に包まれるのは私だけではないはず…。
そこには、いまを懸命に生きる若者たちにも通じる、むき出しの感情と、そして痛みが詰まっているように感じました。
日々の生活感に閉塞感を感じたり、混沌とする世の中を必死に生きるすべてのひとへ、この「フロム・ザ・マディ・バンクス・オブ・ザ・ウィッシュカー」を届けたい。そんな風に思いました。
今日の夢中は、泥だらけの土手から…ニルヴァーナ伝説のライブ盤「フロム・ザ・マディ・バンクス・オブ・ザ・ウィッシュカー」でした。
ありがとう、ニルヴァーナ! ありがとう、「フロム・ザ・マディ・バンクス・オブ・ザ・ウィッシュカー」!