シャーラタンズ「Up to Our Hips」!逆境を乗り越えるヘヴィーなオルガンサウンド

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館長のふゆきです。

今日の夢中は、シャーラタンズ「Up to Our Hips」!逆境を乗り越えるヘヴィーなオルガンサウンドです。
「夢中図書館 音楽館」は、ロックの名盤や新譜、個人的な愛聴盤などをレビューする音楽ブログです。あなたのお気に入りの音楽を見つけてください。

■Up to Our Hips

ザ・シャーラタンズ(The Charlatans)が1994年にリリースした3rdアルバム「Up to Our Hips」
その発売30周年を記念した30周年記念デラックス盤がリリースされました。

オリジナルアルバムの全曲に加え、ボーナストラック10曲を追加収録
ボーナストラックは、フロントマンのティム・バージェスが選曲したアウトテイク、別ミックス、ライヴ・ヴァージョン、BBCセッションなど10曲が収録されています。


Up to Our Hips 30周年記念デラックス盤

そのボーナストラックもファンにはたまらないのですが、やはり注目したいのはアルバム本編です。
いろんな意味で転機となったこのアルバム。バージェスはじめバンドメンバーにとっても忘れられない作品となっているはずです。

このアルバムをリリースした1994年、バンドには逆風が吹いていました
当時の音楽シーンは、マッドチェスターの熱狂が醒め、ブラーやオアシスなどのブリットポップが席巻していました。
それは、マッドチェスター・ムーブメントの一画を担っていたシャーラタンズにとっては逆風…。ややもすると音楽シーンから消え去る恐れもありました。

さらに加えて、この時期にバンドの中心メンバーであるロブ・コリンズが窃盗容疑で逮捕。後に服役するという事件が起きます。
バンドのサウンドを支えるオルガン奏者であると共にソングライターでもあったコリンズの逮捕は、バンドにとって大きな衝撃でした。


Up to Our Hips(1994年オリジナル盤)

そんな厳しい環境のなか、バンドは1993年、のちに「Up to Our Hips」となるアルバムのレコーディングに入ります。
バンドはメンバー個別かペアで曲作りを始め、出来上がった20のデモ音源をもとにスタジオ入り。プロデューサーのスティーヴ・ヒレッジと共にアルバム制作を進めました。

彼らの狙いは、シャーランズの名を再びメインストリームに戻すこと…。
マッドチェスター色の強いエレクトロニックな作風を脱却、よりダークでヘヴィーなオルガン・サウンドを前面に打ち出しました。
もともとR&Bやソウルに影響されたサウンドを持ち味としていた彼ら。あらためて自らのルーツに戻るようなバンドサウンドのリバイバルでした。

結果として、1994年にリリースされたこのアルバムは、音楽評論家から賛否両論の評価を受けながらも、全英8位となるヒットを挙げます。
前作「Between 10th and 11th」がトップ20入りを逃したことを思えば、逆風の中でシャーラタンズを今一度音楽シーンに引き上げたと言えます。
そしてこの逆境を乗り越えたことは、次のアルバム「ザ・シャーラタンズ」(1995年)で全英1位を獲得するという、シャーラタンズの復活劇につながるのです。


ザ・シャーラタンズ

■個人的なおススメ

それでは、シャーラタンズの転機となった3rdアルバム「Up to Our Hips」から、個人的なおススメを紹介しましょう。

まずは2曲目、「I Never Want an Easy Life If Me and He Were Ever to Get There」
なんとも長いタイトルは、直訳すれば「俺は楽な人生などほしくない。仮に俺と彼がそれを得られたとしても」。
この歌詞は、バージェスとコリンズが遭遇するであろう意見の相違や厳しい状況からインスピレーションを得たものとされます。
楽曲はコリンズ流のオルガンがフィーチャー、コーラスはビートルズの「I Am the Walrus」に影響を受けて作られました。サイケデリックでファンキーなナンバーです。

続いて3曲目、「Can't Get Out of Bed」
こちらも、コリンズの窃盗事件を受けてバージェスが作詞したもの。事件の最中に彼の頭の中で何が起こっていたかを推測して書いたそうです。
曲調はポップでロック。何よりもバージェスの歌声が力強いのが特徴です。いろんな思いをこの曲に込めたのかもしれませんね…。
同曲はアルバムのリードシングルとしてリリースされ、全英24位のスマッシュヒットとなりました。

そして6曲目、「Jesus Hairdo」
ノリのいいオルガンの音色ではじまる、シャーラタンズの魅力満載のファンクロック
この曲でもバージェスの艶のある歌声が響きます。初期はストーン・ローゼズの影響か、囁くようなボーカルが多かったけどね。
この曲ではヘヴィーなギターと力強いドラムも重なります。バンドとしての成熟を感じられるナンバー。シングルカットもされました。


いやぁ、久しぶりに聴きましたが、シャーラタンズの持ち味が存分に発揮された良盤ですね。
彼らの作品のなかでは地味めな印象のあるアルバムですが、それでも当時の彼らの置かれた逆境において、これだけの骨太な作品を作ったのはさすが
結果として、マッドチェスター組のなかではその後も息長く活動するバンドに成長、音楽シーンの欠かせない存在となるのです。

今日の夢中は、シャーラタンズ「Up to Our Hips」!逆境を乗り越えるヘヴィーなオルガンサウンドでした。
ありがとう、シャーラタンズ! ありがとう、「Up to Our Hips」!

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