こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、Ducks Ltd.「Harm's Way」!カナダのポップデュオが奏でる懐かしきギターポップ…です。
「夢中図書館 音楽館」は、ロックの名盤や新譜、個人的な愛聴盤などをレビューする音楽ブログです。あなたのお気に入りの音楽を見つけてください。
■Ducks Ltd.
今日とり上げるバンドは、カナダトロント出身のポップデュオ「Ducks Ltd.」(ダックス・リミテッド)です。
2024年2月にリリースされた、彼らの2ndアルバム「Harm's Way」を取り上げます。
Ducks Ltd.は、シンガー兼リズムギタリストのTom McGreevyとリードギタリストのEvan Lewisの2人編成。
2019年リリースのデビューEP「Get Bleak」で注目を集めると、2021年に1stアルバム「Modern Fiction」をリリース。ジャングル・ポップの新星として批評家らの高い評価を受けました。
彼らの音楽は、ゴー・ビトウィーンズやオレンジ・ジュースが引き合いに出されるように、ネオ・アコースティックの影響が見られます。
いま、そうした80sのネオアコをリスペクトするような動きが、米やカナダのバンドに出ているのは面白いですね…。
そんな往年のファンも要注目の2ndアルバムが届きました。それが今日とり上げる「Harm's Way」です。
これがまた、なんとも懐かしいサウンド満載…。80年代あるいは90年代のギターポップの世界にリスナーを誘います。
ただ、歌われている内容は重くシリアス。人々の不安や社会の崩壊、都市の衰退などダークなテーマを歌っています。
それでも社会派メッセージソングとは一線を画しているのは、その美しいメロディと彼らの周りで起きた身近な出来事を題材としていること。
たとえば、「Train Full of Gasoline」では、原油を搭載した列車が脱線して町で爆発したという、実際に起きた鉄道事故を題材。
小さなミスが重なって大惨事になったことから、人生においても同じように小さな問題を無視しないよう警鐘を鳴らします。
そうしたシリアスなテーマも、80sネオアコ仕込みのポップなメロディに乗せると、すーっと胸に染みこんでくるから不思議。
これが、パンデミックやもろもろの社会不安を経た2020年代のギターポップの形なのかもしれませんね。
■個人的なおススメ
それでは、そんなDucks Ltd.の2ndアルバム「Harm's Way」から、個人的なおススメです。
まずは4曲め、「Train Full of Gasoline」。
この曲は先に書いた通り、実際に起きた痛ましい鉄道事故を題材にしています。
ただ、そんな背景を知らないで聴くと、圧倒的に美しいメロディとサウンドに引き込まれます。恋の歌でもいいくらい…。
この歌詞とメロディの対比も彼ら流のアイロニーなのかもしれません。確かに80sネオアコ・バンドも一筋縄ではいかなかった…。
続いて1曲め、「Hollowed Out」。
この曲も、彼らの住むトロントの町で実際に起こった道路の陥没事故を題材にしています。その道路は1か月も閉鎖されたのだとか。
彼らはそれに怒るでも問題提起するでもなく、衰退とともに生きていくことについて淡々と歌っています。私達にはどうすることもできないカタストロフィーがあるんだと…。
そんな暗めの題材が、美しいメロディとサウンドで奏でられるのは「Train Full of Gasoline」と同様。知らず知らず彼らの音の世界にハマっていきます。
そして9曲め、「Heavy Bag」。
アルバムのラストを飾るメロウなナンバー。この曲は、サッカーの試合を見に電車に乗った日のことがきっかけで作られました。
そこには正午前にもかかわらず深酒してる人が多くいたそう…。この歌に何度も出てくる「Down」という単語に象徴されるように、ここで歌われる内容もいまの社会への警鐘を含んでいます。
それにしても、なんて美しいメロディなんでしょうか。音もアコースティック・ギターにストリングスが加わる美しいつくり。そして僕らは、Ducks Ltd.の世界に魅了されたままアルバムを聴き終えるのです。
いやぁ、すっかり引き込まれました。カナダのポップデュオDucks Ltd.の「Harm's Way」。
80sネオアコの流れをくんだこうしたバンドが今の時代に生まれているはとてもうれしい。これからも、懐かしきギターポップを鳴らし続けてください。
ありがとう、Ducks Ltd.! ありがとう、「Harm's Way」!