宅録王ポール、3度目の降臨!「マッカートニーⅢ」

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こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。

今日の夢中は、ポール・マッカートニーの新譜「マッカートニーⅢ」をとり上げます。

■マーカートニーⅢ

稀代のメロディメイカー、ポール・マッカートニーが2020年末、突如ニューアルバムをリリースしました。
それが、今日紹介する「マッカートニーⅢ」です。


マッカートニーⅢ(スペシャル・エディション)

もともと2020年は、ポールにはアルバム・リリースの予定がありませんでした。
しかし、突然やってきたコロナによるロックダウンが彼の予定を一変させます。

ポールはその期間を自分の農場で家族と過ごしましたが、音楽への意欲が衰えることはありませんでした。
そのとき彼が注目したのは、何年も前に少しだけやりかけたものの、楽曲にまで仕上がっていない、歌のピース(素材)たち

彼は毎日、それらのピースを元々書いた楽器でレコーディングをはじめます。そこに段々と楽器を足していって楽曲を仕上げていきました。
「とても楽しかったよ。仕事のために曲を書くのではなく、自分のために曲を作っている感じだった」。そんな風にポールは明かしています。

■Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ

そうして生まれた楽曲を収録したアルバムが、「マッカートニーⅢ」です。
「Ⅲ」と言うからには、もちろん「Ⅰ」も「Ⅱ」もあります。

「Ⅰ」に相当するのは、ポールの1stソロアルバム「マッカートニー」(1970年)です。
もう50年前になるんですね…。当時、ポールのビートルズ脱退が報道されるなか、このアルバムはリリースされました。


マッカートニー

「ソロ」活動への転換を象徴するかのように、アルバム「マッカートニー」はポールの自宅で、ポールの演奏によって録音されました。
リンダのパート以外は、ドラムもギターもぜんぶポールが演奏。いわば「宅録」で、プライベート作品のようなアルバムをつくり出しました。

ポールは、ビートルズという巨大なバンドの幻影を拭い去りたかったのかもしれません。
「Every Night」や「Junk」、「Maybe, I’m Amazed」など隠れた名曲も収録。今もファンに人気のアルバムになっています。

その後、ウィングスを結成してバンド活動を再開したポールですが、1980年の来日公演の際に大麻所持で逮捕、強制送還されます。
送還後、自宅で楽曲づくりを進めて制作されたのが、「マッカートニーⅡ」(1980年)です。


マッカートニーⅡ

機材は、10年前の4トラックから16トラックに進化、シンセサイザーや各種エフェクトを意欲的に取り入れています。
でも「宅録」感は10年前と同じ。ほぼすべての楽器をポールが演奏、プライベート作品のような体となっています。

このアルバムも聴きどころがいっぱい。ヒットした「Coming Up」や、「Waterfalls」「One of These Days」などの隠れた名曲も収録されています。
このアルバムからソロ活動に軸足を移したポールは、「タッグ・オブ・ウォー」や「パイプス・オブ・ピース」などの名盤をつくっていくことになるのです…。

そして、「マッカートニーⅢ」(2020年)です。
「Ⅰ」か50年、「Ⅱ」から40年。どれだけ年月が経っても、ポールのメロディセンスは枯れることはありませんでした。
そして、音楽に対するチャレンジングな姿勢も変わることはありませんでした。
宅録王ポール、3度目の降臨。おススメの楽曲は次の項で紹介します。


マッカートニーⅢ

■個人的なおススメ

それでは、宅録王ポールの新譜「マッカートニーⅢ」から、個人的なおススメを紹介します。

まずは1曲め、「Long Tailed Winter Bird」
アルバムの冒頭を飾るのは宅録王ポールらしい作品。コーラスがわずかに入るだけのインストゥルメンタルです。
ギターのカッティングがなんとも印象的。そこに、オーバーダブしたドラムやベースが重なって、ポール・ワールドがつくり出されます。
ちなみに、アルバム最後の曲で、このフレーズがリプライズされます。この辺はポールの十八番ですね。

続いて2曲め、「Find My Way」
1曲めから一転、ポールの歌声と賑やかな楽器演奏を楽しめるポップ・チューンです。
疾走感のあるエレクトリック・ギターやドラム、ポールの一人高音コーラスも重なって、さすがは宅録王の面目躍如
テープの逆回転風のギターの音色がとり入れられているのも、ビートルズ・ファンには心地いいですね。

そして9曲め、「Seize The Day」
辛い時期があっても今を生きるんだ(「Seize The Day」)と歌う応援ソング。コロナを乗り切ろうとするすべてのひとにエールを送ります。
ノスタルジックなメロディも秀逸。しっとりとずっしりとメロディが胸に響きます。

いやぁ、さすがは宅録王ポール。
ロックダウンに挫けることなく、逆にその時間を使って、作りかけのピースをすてきな楽曲に仕上げてしまいました。
コロナはなお猛威をふるっていますが、私たちも挫けている場合じゃありませんね。「Seize The Day」(今を生きよう)!

ありがとう、ポール! ありがとう、「マッカートニーⅢ」!

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