こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、シャーラタンズ「We Are Love」!過去と向き合いながら未来につなぐ愛のサウンドです。
「夢中図書館 音楽館」は、ロックの名盤や新譜、個人的な愛聴盤などをレビューする音楽ブログです。あなたのお気に入りの音楽を見つけてください。
■シャーラタンズ
Welcome Back!おかえり!シャーラタンズ!
ザ・シャーラタンズ(The Charlatans)が、実に8年ぶりとなる待望のニューアルバム「We Are Love」をリリースしました。
前作「Different Days」から8年5か月の時が経ちましたが、この間、コロナ禍やメンバーのソロ活動、私生活の変化もありました。
メンバーがヨーロッパ中に点在して暮らしていることも影響し、制作には時間がかかったようです。
それでも、まったくブランクを感じさせない傑作をつくり上げるのはさすが。不屈のバンドらしいシャーラタンズの存在感を見せつけています。
ザ・シャーラタンズを知らない方のために、少しだけ彼らの活動を振り返っておきましょう。
バンドは1990年、イギリスのマンチェスター・ムーブメント(マッドチェスター)の渦中にデビューしました。当時の代表曲「The Only One I Know」のグルーヴは、今も多くのファンに愛されています。
マッドチェスターの熱狂が醒めて多くのバンドがシーンから消え去るなか、シャーラタンズは音楽への情熱を絶やさず活動を続け、生き残りました。
バンドの復活を知らしめたのは、1995年の4thアルバム「ザ・シャーラタンズ」でした。ブルースロックの影響を色濃く感じさせるサウンドで、デビューアルバム以来となる全英1位を獲得。
続く5thアルバム「テリング・ストーリーズ」も全英1位を獲得し、単なるブームに乗ったバンドでないことを、音楽面でもチャートでも知らしめたのです。
さらに彼らの不屈さを示すのは、バンドメンバーの不慮の死といった、解散してもおかしくないほどの悲劇を何度も乗り越えたこと。
バンドのサウンドの核であったキーボーディスト、ロブ・コリンズの事故死(1996年)をも乗り越え、シャーラタンズは音楽を探求し続け、今回の新譜「We Are Love」で14作目を数えることとなったのです。
■We Are Love
2025年10月31日にリリースされた、シャーラタンズの14枚目となるスタジオアルバム「We Are Love」。
制作背景で特筆すべきは、伝説的なスタジオ「ロックフィールド」でレコーディングされたという点です。
ロックフィールド・スタジオに戻るのは5thアルバム「テリング・ストーリーズ」以来、およそ30年ぶり。ロブ・コリンズが交通事故により急逝したのもその時期でした。
それもあってか、ティム・バージェスは、ホウントロジー(過去の記憶や存在が現在に回帰するという思想)やサイコジオグラフィ(場所の記憶や感情との繋がり)といった概念が、制作中ずっと頭の中にあったと語っています。
彼らは、そんな過去の思い出が詰まったスタジオでの制作を経て、それらをポジティブな未来のサウンドへと変換しました。
制作陣としては、デヴ・ハインズ、フレッド・マクファーソン、そしてスティーヴン・ストリートら豪華プロデューサーが参加。
その結果生まれたのは、ハモンドオルガンが唸る彼ららしいグルーヴはそのままに、ポストパンクの鋭さと現代的なプロダクションが融合したサウンドです。
アルバム全体を貫くのは、タイトル通り「愛(Love)」。困難な時代だからこそ、人間同士の繋がりや生きる喜びを力強く鳴らしています。
■個人的なおススメ
それでは、そんなシャーラタンズの最新作「We Are Love」から、個人的なおススメです。
まずは2曲目、「We Are Love」。
アルバムのタイトルを冠した、本作のハイライトを成す一曲。疾走感あふれるドラムと高揚感に満ちたギターが響く、普遍の「愛」を歌った新アンセムです。
1stシングルとしてアルバムに先駆けて公開されると、多くのファンが「この音を待っていた」と歓喜しました。
ギタリストのマーク・コリンズが、「アルバム全体の方向性を導いてくれる曲になった」と語る名曲。まさにリードシングルです。
続いて6曲目、「Deeper And Deeper」。
これは、30年もの時を遡ったか…。古くからのファンはニヤリとすること必至の、マッドチェスター風のロック・ナンバーです。
まるでロブ・コリンズが弾いているようなハモンドオルガンの音色に、彼らの代名詞ともいえるサイケデリックなグルーヴが炸裂。
音の渦へと「より深く(Deeper)」引きずり込まれるような没入感がたまりません。思いっきり身をゆだねたくなるような、中毒性の高い一曲です。
そして11曲目、「Now Everything」。
アルバムの最後を飾る、約7分にも及ぶ壮大なフィナーレ。30年を経ても変わらぬ実験精神と、包容力のあるメロディが見事に融合した大作です。
ゴスペルを思わせる祝祭的なムードをベースとしながら、どこかサイケデリックでドリーミー。ここに来て、新たなサウンドスケープをつくり上げたか…。
メロディもティムのボーカルも美しい。「今、すべて(Now Everything)」を受け容れるような、圧倒的な余韻を胸に刻むラストナンバーです。
本当に帰ってきてよかった。おかえり、シャーラタンズ。
「We Are Love」は、30年以上のキャリアを持つバンドが作ったとは思えないほど、瑞々しいエネルギーに満ちています。
今なお輝きを放つ不屈のバンド、シャーラタンズ。もはや、彼らのいないロック・シーンは想像できません。これからもずっとシャーラタンズのサウンドを鳴らし続けてください。
今日の夢中は、シャーラタンズ「We Are Love」!過去と向き合いながら未来につなぐ愛のサウンドでした。
ありがとう、シャーラタンズ! ありがとう、「We Are Love」!