アデル「30」 Easy On Me…美しくも力強い母アデル癒しの歌声

B!

こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。

今日の夢中は、アデル(Adele)の6年ぶり4枚目のアルバム「30」です。

■アデル

今世紀を代表するシンガーソングライター、歌姫アデル(Adele)
その6年ぶりの新作が届きました。アデル通算4枚目となるアルバム「30」です。

これが、これまでのポップスの範疇を超えるような、ものすごいアルバムになっています。
美しく力強く響きわたる孤高の音楽。聴く者の心を揺さぶって止まない圧巻の作品です。

アルバム「30」を紹介する前に、まずはアデルのこれまでの歩みについて振り返りましょう。

アデル(Adele)は、イギリス出身のシンガーソングライターです。
2008年にアルバム「19」でデビューすると、圧巻の歌唱力で注目を集めます。


19 Expanded Edition

2011年の2ndアルバム「21」は、英米含む世界各国でチャート1位を獲得。全世界で3000万枚以上のセールスを記録します。
アメリカでは通算24週1位を記録し女性アーティスト歴代1位、39週連続でトップ5を記録しこちらも歴代1位を記録しました。


21 (国内盤)

その勢いはとどまることを知らず、2015年リリースのアルバム「25」は、英米で同年最も売れたアルバムになります。
同作はグラミー賞で5部門を受賞。前作に続く受賞で、史上初めて主要4部門のうち3部門を2度制覇したアーティストになりました。


25(国内盤)

■30

そんな世界的歌姫アデルが、6年ぶりにリリースしたアルバムが「30」(2021年)です。
こんな人だから売れないわけないんですが、この「30」は少し特別。


30(CD)

とってもパーソナルで、とってもセンシティブなのです。
このアルバムを書き始めるきっかけとなったのは、私生活での躓きでした。

彼女には長年連れ添ったパートナーがいて、彼とは愛息をもうけています。
2019年、2人は正式に結婚します。しかし、順調に見えた結婚生活はやがて綻びを見せ始めます。

程なくして2人は離婚…。結婚と離婚、アデルは30歳の時にこの両方を経験しました。
さらにアデルは、息子とのやり取りに衝撃を受けます。英Vougueにそのことが明かされています。

あるとき、6歳半の息子が彼女にこう言いました。「ママは僕が見えてる?」
なぜそんなことを聞くのか尋ねると、「だって、僕にはママが見えないから…」
息子は私がそこにいなかったことを知っていた…。彼女は、全人生が崩れていくように感じたそうです。


30(アナログ盤)

彼女は幼い息子に宛てて、自分がどういう人間で、どうして離婚という道を歩んだのかを説明するために曲をつくり始めました。
今は理解できなくても、息子が20代、30代になったときに聴いてくれればいい…。

なんて直截的なきっかけなんでしょうか…。実は、アデル自身も母子家庭で育っています。父を許せないとも言っていました。
だから、どうしても彼女は今、自分の思いを曲にしたためたい、アルバムに残しておきたい…そう思ったのでしょう。

アルバム「30」が、これまで以上にやさしく力強く聴こえる背景には、こうしたアデルの強迫観念にも似た強い思いがありました。
「Easy On Me」や「My Little Love」が心に突き刺さるのは、アデルの生の心がさらけ出されているからでしょう。圧巻です。

■個人的なおススメ

それでは、そんな圧巻のアルバム、アデル「30」から個人的なおススメです。

まずは2曲め、「Easy On Me」
母アデルから息子へ、ときを超えて届けられるメッセージ。
それは息子への愛であると同時に、アデル自身への癒しのよう…。
歌声も歌詞もメロディも全てがやさしく美しい。音楽史に刻まれる名曲です。

Go easy on me, baby
I was still a child
Didn’t get the chance to
Feel the world around me
I had no time to choose
What I chose to do
So go easy on me
私を許してほしい まだ子供だった私を
本当の世界を知ることなく 大人になってしまったの
私には正しい道を選ぶ時間なんてなかったわ
だからお願い 私を許してほしいの (ふゆき訳)

続いて11曲め、「To Be Loved」
これまた、生々しくさらけ出される母アデルの心の奥底
息子へのメッセージであると同時に、愛に迷う多くの人への道しるべになるのではないでしょうか。

To be loved and love at the highest count
Means to lose all the things I can’t live without
Let it be known that I will choose to lose
It’s a sacrifice but I can’t live a lie
Let it be known, let it be known that I tried
愛されること そして絶対的に愛すること
それがなければ 生きていく意味をすべて失ってしまうわ
私は失う方を選んでるということを 知っておいてほしい
たしかに犠牲を払うけど うそをついて生きることはできないの
知っておいてほしいの 私はそうしようと努力していたのよ (ふゆき訳)

そして12曲め、「Love Is A Game」
エンディングを飾るにふさわしい感動的なナンバー。ストリングスがラストを盛り上げます。
「愛は愚か者がやるゲームよ」と切り捨てるような歌詞は、夫との間に何があったのか心配になりますが、最後に「I'd do it all again」(もう一度やるわ)と新しい愛へに踏み出すことを宣言しているのは救われます。
そう、愛が傷ついた心を癒すのです。がんばれ、アデル!がんばれ、アンジェロ(息子)!

アデル「30」。これはものすごいアルバムです。
すべての音楽ファンに聴いてほしいと言ったら大げさでしょうか…。

それでも、「Easy On Me」は聴いてほしいと思います。
音楽のチカラに背中を押される楽曲です。辛いとき、苦しいとき、私たちは音楽に救われることがあるでしょう。

アデルの音楽は、他者を癒すだけでもなく、自身をも癒す力強さを感じました。
むしろ、自身の原体験を通じた強迫観念のような癒しのパワーが、アデルの音楽を一段ステップアップさせているよう…。傑作です。

ありがとう、アデル! ありがとう、「30」!

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