こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、ジェリーフィッシュ珠玉のポップソング集「こぼれたミルクに泣かないで」です。
「夢中図書館 音楽館」は、ロックの名盤や新譜、個人的な愛聴盤などをレビューする音楽ブログです。あなたのお気に入りの音楽を見つけてください。
■ジェリーフィッシュ
今日は、1990年代前半に傑作アルバム2作品をリリースして解散したロックバンドを取り上げましょう。
そのバンドの名は「ジェリーフィッシュ」(Jellyfish)。パワーポップの系譜にその名を刻む名バンドです。
ジェリーフィッシュは1989年、米サンフランシスコでアンディ・スターマーとロジャー・マニングによって結成されました。
1990年にデビューアルバム「ベリーバトゥン」(Bellybutton)をリリース。ビートルズやクイーンなどを彷彿させるポップな作風で一躍注目を集めます。
同作は特に業界関係者から高い評価を受けたことにより、彼らのもとに様々なコラボレーションの依頼が舞い込みます。
ティアーズ・フォー・フィアーズやリンゴ・スター、さらにはブライアン・ウィルソンまで…。アンディとロジャーは精力的にそれらをこなし、2人はリンゴのMVに出演もしました。
こうした著名人とのセッションを経て、2人はバンドの次のアルバムを最高傑作にすることに専念します。
彼らは1991年10月から1992年3月まで、ロサンゼルスで週6日、1日約8時間を費やして楽曲制作に取り組みました。
アルバム制作にはさらに半年をかけて、弦楽器や金管楽器、フルート、ハープシコードなど様々な楽器を使用してセッションを重ねました。
さらにアレンジも凝りに凝って、ボーカルも何度となく録り直しました。アンディは、ボーカルを録音しているとき気絶したというエピソードを明かしています。
こうして出来上がったのが、2ndアルバムにしてラスト・アルバムとなった「こぼれたミルクに泣かないで」(原題:Spilt Milk)です。
タイトルは、制作にまつわる大変な作業と混乱にちなんで名付けられましたが、それだけ労力をかけたに相応しい見事な作品に仕上がっています。
楽曲のすばらしさに加え、美しいコーラスワークや細部までこだわったサウンドアレンジ…本作はパワーポップの名盤として今なお高い支持を得ています。
惜しむらくは、本作をもってバンドが解散してしまったこと。原因はアンディとロジャーの音楽性のすれ違いとされていますが、やはり本作で精も根も尽き果てたのでしょう…。
今日の夢中は、そんなジェリーフィッシュの全てを注ぎ込んで制作された傑作アルバム「こぼれたミルクに泣かないで」を取り上げます。
■個人的なおススメ
それでは、ジェリーフィッシュの傑作アルバム「こぼれれたミルクに泣かないで」(原題:Spilt Milk)の楽曲を聴いていきましょう。
どれもこれも珠玉のポップソングなのですが、その中でも特に個人的におススメしたい楽曲はこちら!
まずは2曲め、「Joining A Fan Club」。
これぞジェリーフィッシュというような珠玉のポップナンバー。ビートルズかクイーンか…往年のレジェンドたちが思い浮かぶほど、様々なポップの仕掛けが施されています。
特に曲の中盤、メロディが転調する展開は圧巻。突如重めのギターが鳴らされると、ポップからロックの世界へ、まるで違う曲のようにギターが自在に疾走します。
ジュリーフィッシュ版サージェント・ペパーズかペットサウンズか…。気絶するほどボーカルを録り直したのもよく分かる凝りに凝ったポップソングです。
続いて4曲め、「New Mistake」。
シングルカットもされた抒情的なバラードナンバー。こういう王道のポップソングも奏でられるのが、彼らの強み。
徐々に盛り上がっていく音の造り、ベースをなす甘いメロディ、彩りを与える美しいコーラス、どれもこれも一級品です。
所々に管楽器が入っていたり、効果的に弦楽器が使われていたり、異なるギターアレンジが施されたりしていて、聴いていて楽しい。この楽しさも彼らの持ち味です。
そして6曲め、「The Ghost At Number One」。
圧巻のポップオペラ…。3分36秒の曲に、これでもかというくらい、様々なポップの魔法が仕掛けられています。
ブラスに、バンジョーに、グラスが割れる音…。思いも寄らないサウンドの玉手箱。気が付くとすっかり彼らの虜になっている自分がいます。
2つのボーカルパートが掛け合わされていく終盤も聴きどころ。最初から最後まで音造りにこだわった楽曲、ポップの才人ジェリーフィッシュだからつくり出せた楽曲と言えるでしょう。
掛け値なしにすばらしい…。傑作です、ジェリーフィッシュのアルバム「こぼれたミルクに泣かないで」(原題:Spilt Milk)。
このアルバムが商業的な成功を収められなかったのは本当に残念…。特に本国アメリカで不調だったのは、このときブームだったグランジロックに影響されたものと言われます。
それでも名作は残ります。本作はパワーポップの名盤として、多くのミュージシャンに愛され高い評価を受けています。
ちなみに、アンディは日本のミュージシャンとも縁が深く、パフィーの名付け親になったりしています。アルバムのプロデュースも手掛けました。
ロジャーも新たなバンドで活動しています。できれば2人のジェリーフィッシュを見てみたいけど、彼らの言動を見る限りそれは難しそう…。
ちょっと残念ですが、それでも泣くことはありません。僕らはこれからも、ジェリーフィッシュが残した珠玉のポップアルバム「こぼれたミルクに泣かないで」を聴き続けることができるのだから。
ありがとう、ジェリーフィッシュ! ありがとう、アルバム「こぼれたミルクに泣かないで」!