ブリットポップはもういらない…歪んだギターと生々しい歌声が放つ5枚目「ブラー」

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館長のふゆきです。

今日の夢中は、ブリットポップはもういらない…歪んだギターと生々しい歌声が放つ5枚目「ブラー」です。
「夢中図書館 音楽館」は、ロックの名盤や新譜、個人的な愛聴盤などをレビューする音楽ブログです。あなたのお気に入りの音楽を見つけてください。

■今日は何の日

1日1頁、その日に起きた出来事やミュージシャンの誕生日などが記載されているタワレコ手帳(現在は製造中止…)。

3月12日の頁には、こんな出来事が記されていました。

【誕生日】グレアム・コクソン(ブラー)(1969)

グレアム・コクソンは英コルチェスター出身のミュージシャン。ブリットポップで一世を風靡したブラー(Blur)のギタリストです。

今や、ブラーのサウンドに欠かせない存在となっている、グレアムのギターとソングライティングですが、初期の頃はそこまでフィーチャーされることがありませんでした。
それが大きく転機をむかえたアルバムが、1997年リリースの通算5枚目となるスタジオアルバム「ブラー」(Blur)です。


Blur

1990年代に勃興したブリットポップ・ムーブメント。その旗手として一躍人気を集めたブラーでしたが、過熱するオアシスとの比較論争などメディアの狂騒に精神をすり減らしていきます。
そんな最中、バンドのフロントマンであるデーモン・アルバーンが「ブリットポップは死んだ」と発言。バンドは「脱ブリットポップ」を志向し、その音楽性はアメリカへと接近していきました。

この劇的な変化の鍵を握っていたのが、ギタリストのグレアム・コクソンです。
彼は当時、母国イギリスの整いすぎたポップシーンに嫌気がさし、ペイヴメントやダイナソーJr.に代表されるアメリカのオルタナティヴ・ロックに傾倒していました。

一方、デーモンは当初その方向に懐疑的でしたが、自身のプライベートな苦悩やスター疲れも重なり、グレアムが提示する「もっとラフで、もっとノイジーな音楽」に可能性を見出します。
こうして、イギリスを象徴するウィットに富んだバンドが、アメリカ産のラフで暴力的なギターサウンドを取り込むという、前代未聞の化学反応が起きたのです。


Blur(レコード盤)

そうして生まれたアルバムが1997年リリースの「ブラー」(Blur)でした。その特徴は、一言で言えば「脱・イギリス」——。
これまで得意としていた、イギリスの中流階級を皮肉たっぷりに描く「物語調の歌詞」を封印。デーモンはよりパーソナルな感情を、直接的に歌うようになりました。

サウンド面でも、きらびやかなホーンセクションは影を潜め、代わりに歪んだギター、実験的なエフェクト、そしてルーズなドラムが支配しています。
「全英1位を獲るための音楽」ではなく、「自分たちが今、鳴らしたい音楽」を追求。その結果、皮肉なことに、彼らが長年苦戦していたアメリカ市場をもこの一枚で陥落させることになったのです。

■個人的なおススメ

それでは、そんなブラーの通算5枚目のスタジオアルバム「ブラー」から、個人的なおススメを紹介しましょう。

まずは1曲目、「Beetlebum」
冒頭から刻まれる棘がささるような生々しいギター。ブリットポップの中核にいたとは思えない、ダークな雰囲気と気だるいボーカル
ビートルズへのオマージュを感じさせつつも、サウンドは重く、霧の中を彷徨うような浮遊感に満ちています。
実はこの曲、デーモンが当時の恋人と溺れていた「薬物」への依存を暗喩していると言われ、その生々しい告白のような歌声に引き込まれます。
後半、グレアムのギターが激しく荒れ狂うパートは、バンドが新しいステージへ踏み出した瞬間を象徴しています。

続いて2曲目、「Song 2」
説明不要、ブラー史上最大のヒット曲にして、わずか2分1秒の爆弾です。2曲目という「Song 2」という仮題がそのまま曲名になりました。
「Woo-hoo!」という叫び声と共に炸裂する歪んだギターは、実はアメリカのグランジ・ムーブメントに対する「皮肉」として作られたものでした。
しかし、その圧倒的なエネルギーは皮肉を突き抜け、世界中のスタジアムで合唱されるアンセムとなりました。
その荒々しさは、MVでも表現されています。彼らがブリットポップを壊し、ただ衝動のままに音を鳴らした結果生まれた、奇跡的な楽曲です。

そして7曲目、「You're So Great」
グレアム・コクソンが初めて作詞・作曲・ボーカルのすべてを担当した、ローファイなラブソング。
まるで自宅の寝室で録音したかのような、ノイズ混じりのアコースティック・ギターと、少し震えるグレアムの歌声。
これが、たまらなく愛おしい…。完璧に整えられたスタジオ録音では決して出せない「不器用な誠実さ」がここにはあります。
この曲があったからこそ、後のアルバム「13」へと続くバンドの深化が可能になったと言っても過言ではありません。


胸に突き刺さりました…。当時のデーモンやグレアムが抱えていた悩みや苦しさや汚れがダイレクトに伝わってきます。
バンド「ブラー」は、自分たちに貼られた「ブリットポップ」というレッテルを剥がし、アルバム「ブラー」で生身の自分たちをさらけ出しました。
聴き終えた後、あなたもきっと「Woo-hoo!」と叫びながら、自分でまとった殻を壊したくなるのではないでしょうか。

今日の夢中は、ブリットポップはもういらない…歪んだギターと生々しい歌声が放つ5枚目「ブラー」でした。
ありがとう、ブラー! 誕生日おめでとう、グレアム!

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