新世代のリアルな歌!ビーバドゥービー「フェイク・イット・フラワーズ」

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こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。

今日の夢中は、注目の新人ビーバドゥービーのファースト・アルバム「フェイク・イット・フラワーズ」です。

■ビーバドゥービー

期待の新人あらわる…
Z世代の若者を中心に人気を集めるビーバドゥービーが、待望のファースト・アルバム「フェイク・イット・フラワーズ」をリリースしました。

ビーバドゥービーは、2000年にフィリピンで生まれ、3歳から英ロンドンに移り育ったベアトリス・クリスティ・ラウスのソロ・プロジェクト。
カトリック系の女子校に通いますが、フィリピン系の生徒が自分一人だったために、大変つらい思いをしたようです。

そんな彼女を救ったのが音楽でした
父親から中古のギターをプレゼントされると、YouTubeを見てギターの弾き方を習得。

そのギターではじめて書き上げた曲「Coffee」をYouTubeにアップロードすると、30万回以上のストリーミングを記録しました。
ちなみに、この曲は2019年にカナダのラッパーPowfuのシングル「death bed(coffee for your head)」でフィーチャーされ、TikTokで1か月41億回再生なんてとんでもない記録も挙げています。

この「Coffee」(2017年)の人気が、Dirty Hit Recordsからのオファーにつながりました。
同レーベルと契約した彼女は、2018年2月にデビューEP「Lice」を、そして同12月に2ndEP「Patched Up」をリリースしています。

2019年に入っても勢いは止まらず、4月に3rdEP「Loveworm」、10月に4thEP「Space Cadet」を次々と発表。
この年のNME新人賞をはじめ、各賞を受賞しまくります。そりゃ「期待の新人あらわる…」になるよね。

■フェイク・イット・フラワーズ

そんな「期待の新人」ビーバドゥービーの待望のデビュー・アルバムが登場。
アルバムのタイトルは「フェイク・イット・フラワーズ」


フェイク・イット・フラワーズ

これが期待にたがわず、すばらしいアルバムになっているのです。
プレッシャーなどまるで無い。今の彼女の思いや好きなメロディを思う存分鳴らした感じ。「素」の彼女の歌を聴くことができます。

「Loveworm」では90年代シューゲイザーへのアプローチも見せた彼女。
今回は、90年代グランジやオルタナ・ロックを感じさせるバンド・サウンドとなっています。


Loveworm

本人が敬愛しているというスティーヴン・マルクマス(ペイヴメント)やエリオット・スミス、スマッシング・パンプキンズ、ソニック・ユースらの影がくっきりと見えます。
プロデューサーのピート・ロビンソンはRollingStone誌インタビューで「カート・コバーンが曲を書くならあんな感じだっただろう」なんて言ったりしています。

そうなんです。これ、Z世代はもちろん、90年代グランジ好きの世代にも、たまらないアルバムになっているんです。
彼女が多感な時期に聴きまくった90年代ロックに乗せて、自らのつらい経験や怒りや謝罪などをそのまんま、自分の言葉で歌にした…。
そのあまりにもストレートなアプローチが、聴く者たちにズシンと響くのでしょう。このアルバムを聴いて、そんな風に思いました。

■個人的なおススメ

それでは、そんなビーバドゥービーのアルバム「フェイク・イット・フラワーズ」から、個人的なおススメです。

まずは、1曲め「ケア」
「ベッドルーム・ポップ」なんて称されるビーバドゥービーの優しい歌声ではじまるナンバー。
そこにギターが絡みついて、彼女のストレートな歌詞が加わると、サビでは内に秘めた熱い思いがあふれ出します
「素」の彼女の生々しい心情が聴く者に突き刺さります…。アルバムの1stシングルです。

I don’t want your sympathy
I guess I’ve had it rough
But you don’t really care
同情なんていらない ひどい目に遭ったと思うけど
あなたはまったく気にかけなかったわよね(ふゆき訳)

続いて、2曲め「ワース・イット」
90年代グランジやオルタナ・ロックの影響を色濃く感じるロック・ナンバー。
「この曲はティーンネイジャーの不貞、そして何か試みようとした時に犯す過ちについて純粋に歌ったものなの」というコメントにある通り、やはり彼女の思いが生々しく突き刺さります。ロックの原点ですね…。

そして、7曲め「ソーリー」
この曲についてビーバドゥービーは、「自分が友情関係に対して犯した過ちへの謝罪と告白なの」と明かしています。
自分が愛している人が苦しんでいるときに何もできなかったことに対する「I'm sorry」…。
そんな彼女の後悔をあらわすように、やさしいストリングスが中盤で一転、激しいギターに変わると、「I'm sorry」という言葉がリアルに形を成します。アルバムの2ndシングルになりました。

いやぁ、突き刺さりました…。Z世代というと宇宙人みたいな感じがしていましたが、ロックの世界では差が無いんですね。
怒りや哀しみ、希望や愛…。そうしたものを聴くひとに届けたいという思いは、今も変わりません。ロックの原点ですね。
ビーバドゥービー、これからも「ケア」していきたいと思います。

ありがとう、ビーバドゥービー! ありがとう、「フェイク・イット・フラワーズ」!

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